買ってよかった"超知的な"出産本。

今週のお題「今年買って良かったモノ」

個人的な話だが、私は４年ほど前に出産をした。

妊娠発覚前に気づかずに健康診断でレントゲンを受けてしまっていたこともあり、初めての出産の不安から、当初は悪阻に苦しみながら毎日あれこれとググっていた。そして、巷で言われているあらゆる"説"にはどれも少しだけ疑問を持った。

・妊娠中は生魚を食べてはいけない。

・妊娠中はお酒・タバコは厳禁。

・妊娠中はカフェインを摂取してはいけない。

・妊娠中は太りすぎてはいけない。

・赤ちゃんが泣くのは○○だから。

・母乳で育てないと肥満体質になる。

etc...

特に私はコーヒーが大好きなので"カフェイン禁止"の部分に引っかかっていた。本当に？本当に飲んじゃダメなの？ 体重についても病院でうるさく言われるけど、本当にそんなに厳しく管理する必要あるの？と、小さい疑問を抱えながら出産し、働くママ育児に励んでいたわけだが、子供も３歳になった今年になって、こんな本に出会った。

お医者さんは教えてくれない 妊娠・出産の常識ウソ・ホント

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エミリー オスター
東洋経済新報社
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新進気鋭のアメリカ人経済学者エミリー・オスターのマタニティ書だ。私と同じ年の彼女は、娘を出産した経験からこの本を書いた。彼女もやはり疑問を持った。アルコールは本当にNGなのか？少しはOKなのか？OKだとすれば"少し"ってどれくらいの量を指すのか？そこで彼女は、世界中のあらゆる学術データを紐解き「やってもかまわないこと」「やらない方がいいこと」を可能な限り客観的に判断していくことにした。

 

・妊娠中に食べてはいけないもの／食べたほうがいいもの

・太りすぎのリスク／太らなすぎのリスク

・悪阻について

・出生前診断

・陣痛誘発剤

・アルコール

・タバコ

・カフェイン

・運動

・飛行機に乗ったときの放射線の影響

etc...

 

妊娠～出産直後までしか網羅していないところが私としては残念ではあるが、育児についてのあれこれは今後に期待したい。とにかく、この本を読んで私のモヤモヤはかなりスッキリした。今更だが、健康診断のレントゲンなんて気にする必要はなかったと安心できたし、減らしてはいたがコーヒーを飲んでいたことにも罪悪感を抱かずに済んだ。そして、限度ギリギリの１４キロまで体重が増加してしまったことについても、どうとも思わなくなった（もともとあまり気にしていなかったが）。本書によれば、体重の増えすぎによるリスクより、体重が減ったり増えなかったりするリスクの方がずっと高いのだ。そして、妊娠中にヨガをやらなかったことを少しだけ後悔した。

 

とはいえ、本書が"何もかもOK！"と言っているわけではない。特に、タバコに関してはかなりハッキリと「吸うべきではない」と結論付けている。また、データはどうあれ彼女が"こうする"と決めていたことについては、正直にそう書いている。徹底的な分析力と、ハッキリとした物言いは読んでいてとても気持ちがいい。

 

妊娠していたり赤ちゃんを育てていたりすると、本当に色々な"説"が耳に入ってくる。シャンパンを１杯飲んだだけで母親失格のような目で見られることもあれば、「抱き癖がつく」「抱き癖はついた方がいい」という相反する信者との板挟みにあうこともある。もちろん、母乳信仰に苦しめられることもあった（私はミルクで育てた）。お菓子やジュースをあげることを非難されることもあるし、オムツが外れないことにイヤミを言われることもある。

 

そんなあれこれの中で、私が１番ウンザリするのが"赤ちゃん"を主語にした"説"だ。

 

・母乳じゃ赤ちゃんが可哀想。

・赤ちゃんが眠くて泣くのは死の恐怖を覚えているから。

・帝王切開や無痛分娩だと我慢のきかない子になる。

etc…

 

もう、全力で聞きたい。赤ちゃん本人に聞いたのかよ。特に「眠くて泣くのは死を恐れているから」なんていうトンデモ理論がFBでシェアされまくっていたのには仰天した。「どうして眠いと泣くのよ！？」と日々苦しんでいる母親にとって心の支えになる…のかもしれないが、いくらなんでもブッ飛んでるだろ。

 

なんだか、何もかもがこういう感じなのだ。赤ちゃんのために、赤ちゃんが喜ぶから、赤ちゃんが可哀想だから…だからそれ、赤ちゃん本人に聞いたのかよ（２回目）。

 

そんな、よく分からない信仰や"説"にモヤモヤしている全ての女性に読んでほしい本だ。何だって、「本当に？」と思ったことは疑ってかかっていいんだよ。そう教えてくれる良著だ。