時間がありすぎ日記

ガムシャラに働いた後、関西で主婦生活に突入。時間がありすぎて途方に暮れているので日々思ったあれこれを。

映画の邦題の不思議。

 

www.cetera.co.jp

こんな映画を観た。『ブラス!』『フル・モンティ』『リトル・ダンサー』の系譜に数えられる炭鉱ストもので、素晴らしかった。ゲイコミュニティの若者たちが苦境に立たされている炭鉱のために募金活動を始めるという物語なのだが、原題である『PRIDE』というタイトルそのままに、人間としての誇りと尊厳をテーマにした笑って泣ける清々しい映画だった。観て良かった。

 

で、『パレードへようこそ』って何?

 

いや、ゲイパレードも炭鉱ストも出てくるよ?でも、なぜ『プライド』が『パレードへようこそ』になるのか。『ブラス!』『フル・モンティ』『リトル・ダンサー』よりも音楽や踊りの要素が強くないから、それをごまかすためにこの邦題になったのか?意味がわからない。正直、この邦題のせいで炭鉱モノというイメージが消え去り、必要以上に小作品なのかなという印象を与えてしまっている。ヒットしなかったのは邦題のせいもあるのではないだろうか。

 

こういったダメな邦題というのは、無数に散見される。ダメなのはいっぱいあるので過去に『これはイケてる!』と思った邦題をいくつか。


http://wwws.warnerbros.co.jp/thetimetravelerswife/

原題『The Time Traveler's Wife』。いやー、原作が小説だから仕方ないとはいえ、あまりにも捻りのないタイトル。内容はなかなか面白いSFラブストーリー。自分の意思に関係なくタイムトラベルしてしまう男という設定がユニークだし、ストーリー展開もよくできている。非常にロマンチックなので、『きみがぼくを見つけた日』という邦題はワザあり感があって結構好き。


http://movies.yahoo.co.jp/movie/%E8%BF%BD%E6%86%B6/14838/

原題『The Way We Were』。言わずと知れた名作恋愛映画だが、これを『追憶』とするそのセンスに脱帽。どんだけ詩人なんだよ!


http://bitters.co.jp/choco/

原題『Any Day Now』。ネグレクトされていたダウン症の少年を引き取るゲイカップルの実話に基づく物語。この邦題には賛否両論あると思うが、私は大好き。『チョコレート・ドーナツ』にしましょうと提案した担当者にも、それを通した配給会社にも拍手を送りたい。原題なと、いつの日かきっと…!というニュアンスになるのかな?テーマとしては合っているし、アラン・カニングが最後に歌う曲とリンクしているのは分かるんだけど、この邦題の方が3人の家族としての愛が表されていて好きだ。そして、この作品は名作中の名作だ。


とりあえず思いつくのはこのくらい。他にもあるかなー。






 

買ってよかった"超知的な"出産本。

今週のお題「今年買って良かったモノ」

 

個人的な話だが、私は4年ほど前に出産をした。

 

妊娠発覚前に気づかずに健康診断でレントゲンを受けてしまっていたこともあり、初めての出産の不安から、当初は悪阻に苦しみながら毎日あれこれとググっていた。そして、巷で言われているあらゆる"説"にはどれも少しだけ疑問を持った。

 

・妊娠中は生魚を食べてはいけない。

・妊娠中はお酒・タバコは厳禁。

・妊娠中はカフェインを摂取してはいけない。

・妊娠中は太りすぎてはいけない。

・赤ちゃんが泣くのは○○だから。

・母乳で育てないと肥満体質になる。

etc...

 

特に私はコーヒーが大好きなので"カフェイン禁止"の部分に引っかかっていた。本当に?本当に飲んじゃダメなの? 体重についても病院でうるさく言われるけど、本当にそんなに厳しく管理する必要あるの?と、小さい疑問を抱えながら出産し、働くママ育児に励んでいたわけだが、子供も3歳になった今年になって、こんな本に出会った。

 

お医者さんは教えてくれない 妊娠・出産の常識ウソ・ホント

映画『恋人たち』に思ったこと(ネタバレ注意)

koibitotachi.com

 

濃度の高い映画というのは存在する。しかし、これほどの濃度ってあり得るだろうか。暴力描写も大仰な音楽もない。わかりやすいカタルシスもない。それなのに、これほどまでのインパクトを与えるとは一体どういうことなんだ。

 

主人公は3人。ワークショップで選ばれたという素人俳優たちだ。妻を通り魔に殺されて鬱々とした日々を送るアツシ、自分に無関心な夫と気の合わない姑と暮らしている主婦の瞳子、ゲイのエリート弁護士四ノ宮。

 

アツシは一番キツイ状況にいる。彼は妻を失った喪失感や犯人への恨みから逃れられないし、精神的にも経済的にも厳しい日々を送っていて心の支えを見つけられずにいる。(※映画は彼の独白から始まるのだが、この<相手に届かないモノローグ>はこの主人公たち3人に共通して登場する仕掛けでもある。)しかし、そんなアツシの周囲は温かい。務めている会社の片腕の上司は彼を気にかけ、柔らかく受け止める。他の同僚たちも暗すぎるアツシをバカにしたり避けたりはしない。かといって、積極的に同情を示してくるわけでもない。途中で若手女子社員が声をかけたシーンなんかは印象的だ。あんなに優しく心を軽くするセリフ、どうやったら思いつくんだろう。そして、デリカシーのない人々に何を言われようが、アツシはキレかかったりしない。自分の中にしまいこむ。この映画に描かれている<妻を理不尽な方法で奪われた夫>を待っているのは狂気ではなく、「それでも人生に光を求めてもいいんだよ」という優しい眼差しだ。途中、目の前でイチャイチャする不細工なカップルをアツシが見つめているシーンがあるのだが、アツシがカップルを見て感じていたのは<過去への悔恨>や<イラつき>ではなく、『ああ、幸せそうだなあ』という気持ちだったという。私は少し驚き、そのシーンで上司がアツシに語りかける言葉を聞きながら、こう思った。この映画の根底には、人間は強く優しい存在なのだという信念がある、と。

 

対して、瞳子の置かれている状況はそれほど酷くない。ほぼ会話のない夫と定期的に行う性交(なぜか避妊している)。そして、表立ってぶつかるわけではないが、何となく馬が合わない姑との同居。かわりばえのしない退屈な生活だとは思うが、パート先の仲間とは楽しそうだし、趣味でイラストや小説を書く時間的な余裕もある。そんなある日、パート先で出会った取引先の男と色々あって不倫関係になり、結論から言うと騙されそうになる。駆け落ちしようとやってきた部屋で実はシャブ中だった男を前にして、瞳子は独白する。そして、また日常に戻った瞳子に対し、姑は料理を褒め、夫は避妊をやめようと言う。瞳子に関しては、衣裳が非常に象徴的だ。彼女はスカートしか履かないのだが、絶対にスカートだけは身に着けている。上半身を脱ぐ、下着を脱ぐ、パンストを脱ぐ、などスカート以外の着脱シーンは多いのに、スカートだけは脱がない。それは、彼女が年若き女性だった時代から抜け出せないことの象徴なのかもしれない。雅子様ご成婚の22年前から止まってしまった時間。まだ20代であったであろう彼女は、夫の避妊希望に盲目的に従ってきた。そして、独白によって夫との馴れ初めを吐き出したことで、自分の頭で考えることを拒否し続けてきたことを自覚した。改めて自らの意志で戻ってきた家庭において、夫からの避妊解除の要請を受け、ようやく瞳子の止まった時間は進みだす。年齢的にはもう子供は望めないかもしれないが、止まった時間が動き出した意味は大きいだろう。

 

ところで、瞳子のパートは楽しく笑えるシーンが多い。途中で出てくる詐欺師の女も、木野花演じる姑もけっこう面白い。途中、男に連れて行かれた養鶏場で、職員らしき若者が背後で語っていた台詞にも笑った。「食うだけ食って、やって、産むだけですから。バカしかいませんよホント」とか言っていて、「養鶏場なんだからそれでいいだろ(笑)」と心の中でツッコんだ。こういう、かなりテキトーな台詞なんかが密かに仕込まれているのも、この映画の楽しいところだ。実は笑えるシーンが数多くあるのだが、気づかずに全く笑えない人もいるだろうな、という控えめな感じがとても良い。また、「結局あれって何だったんだろう?」と思うようなシーンもあって、答えは提示されないまま終わったりするのだが、そんな程よい中途半端さも心地よかった。だって、生きるってそういう感じだもんな。

 

弁護士の四ノ宮はゲイの弁護士。職場では分からないがプライベートではカミングアウト済で若い恋人もいる。しかし、エリートで自己評価が高いタイプである四ノ宮はおそらく敵も多いらしく、何者かに階段から突き落とされてしまう。入院中の病院に見舞いに来た学生時代の親友家族。そこで四ノ宮がとった何気ない行動が、親友の妻の誤解を招いたことで、彼は親友一家に避けられるようになってしまう。四ノ宮の高圧的な態度に嫌気がさした恋人には逃げられ、密かにずっと思いを寄せていた親友にも避けられ、切られた携帯に向かって独白する四ノ宮。ずっと好きだったお前がイヤがることをするわけがないじゃないか…と。四ノ宮がアツシや瞳子と違うのは、彼が失ったのはプライベートだけという点だ。職場では何ら問題が生じていないので、社会的に危機に陥ったり転落しかけたわけではない。その代わり、彼のパートの描写は精神的にキツい。アツシが周囲の温かい眼差しに救われ、瞳子が周りと楽しげに会話をしているのに対し、四ノ宮は拒否され続ける。観ていてツラいのだが、しかしそれは「ゲイというだけで差別されて可哀想」という感情を抱かせるものではない。恋人に対する彼の態度は褒められたものではないし、あんな風に親友に対して明らかに好意がある様子を見せていたら、ゲイどうこう以前に妻が警戒し遠ざけようとするのも分からなくもない。四ノ宮が不幸なのは、ゲイであり<イヤな奴>であるが故に、気持ちを受け止めてもらえる人が身近にいないということであり、3人の中で彼が最も孤独である。感情的な女子アナの相談を受けているとき、親友のことを思い出して溢れかけた涙を「私の気持ちを分かってくれた」と勘違いした女子アナは歓喜し、四ノ宮に対し感謝する。それは、彼が攻撃やプライドの壁を用いずに他人と相対した初めての瞬間であり、その後に見せた彼の笑顔に私はホッとした。

 

この映画は、人生とは何かを描いた作品だ。そして、題材は不条理で暗くとも、根底に流れている視線は優しく明るい。彼らとともに人生を歩んだような感覚で、すっかり疲労してしまった私はヨロヨロと映画館を後にしたが、心の中は人生への賛歌で満ちていた。なによりも、こんな映画を生み出せる世界は素晴らしい。

ドラマ『下町ロケット』5話。ちょっと待って。おかしくないですか?

mainichi.jp

遂に20%超!!止まるところを知らないパワーだ。野球で放送開始時間が延びたというのにこの数字は驚いた。私は杉良太郎の仰々しい溜めの演技と吉川晃司の涙に爆笑したが、大多数の視聴者は感動の涙を流していたことだろう。

 

毎回、危機と口惜しさとカタルシスが用意されていて、観終わった後にスッキリできる構成は素晴らしいし、実際に私も毎週楽しみに見ているのだが、昨日はちょっとモヤモヤした。そこで、モヤモヤの原因を考えてみた。

 

帝国重工、手順違わね?

佃製作所の特許取得が判明→特許売却を要請(佃却下)→特許使用許可を要請(佃却下)→佃製作所より部品提供を打診→製品チェック→実験→社長説得→部品提供GO!!

 

という流れで手続きが進められていたと記憶している。

 

実験に成功した後、財前と佃が「社長の説得、俺に任せてください!」「あなたを信じます!」みたいな感じでカッコよく盃を交わしていたが、おかしくね?

 

私が佃だったら「いやいや、そんな社内事情知らないし。っていうか、まだ社長に言ってなかったの!?」と返すところだ。順番がおかしいだろ。

 

本来あるべき手順

私も旧体質の大きな会社にいたので「正直、上司がウンっていうかどうかっていう問題は大きいです」みたいな言い訳をしたことはあるが(恥ずかしながら)、それはさすがに取引先を実際に動かす前までの話だ。短期間で無理な作業をお願いした後になって「実はこれから上司の許可取りなんです」なんて言ったことはない。恥ずかしすぎる。

 

4話で、財務調査にきた失礼極まりない戸次重幸に対して、立川談春が「うちが特許使用許可すら出さなかったら困るのはそっちだろ」という旨の発言をしたのだが、まさしくその通り。部品提供はともかく、佃が特許使用するすら認めなかったら「ロケットは絶対に打ち上がらない」のだ。こちらの社内の力関係なんていう、くだらなすぎる理由でヘソを曲げられて特許使用すら拒否されるのは、最も避けねばならない事態のはず。

 

ならば、本来の手順はこうだろう↓

 

佃製作所の特許取得が判明→特許売却を要請(佃却下)→特許使用許可を要請(佃却下)→佃製作所より部品提供を打診→社長を説得&佃製品のチェックをする許可を得る→製品チェック→実験→部品提供GO!!

 

少なくとも、佃製作所に試作品を作らせる前に社長に言えよ。っていう話だ。そもそも、あんなに金のかかりそうな実験までしておいて役員連中に気づかれていないというのも凄いが。あり得ん。

 

「どうでもいい社内事情を社外の人間に堂々と言うなー!!」

 

誰かにそう言ってほしかったが、そんな台詞はなかった。残念だ。

 



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ドラマ『コウノドリ』がヤバい。

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気づいてしまった。これは原作を超えている。だって、原作では泣かなかったのにドラマでは毎週ボロボロ涙を流して泣いている自分がいるんですもの。ストーリー同じなのに。むしろピアノのシーンはちょっと滑稽になっているくらいなのに。

 

原作『コウノドリ』は、良くも悪くも冷静な視点を失わない作品だ。客観的であろうとすることに非常に重きを置いている印象で、敢えてドラマチックにならないように配慮している感じだ。出産はデリケートな問題なので、作者の意見といったものができるだけ反映されないように考慮しているのだろう。

 

ドラマもそれは一緒なのだ。特にテイストが変わっているわけでもない。一緒なのに、こんなにも心を揺さぶられてしまうのは、人間が演じているから。リアルな人間の声と動きと感情から表される『絵』は、いやがおうにもこちらの心を揺さぶる。

 

特に今日の中学生の出産シーンはヤバかった(山口まゆ)。「陣痛がきたらいきんでー」の声に合わせたいきみ方がマジリアル。出産現場に立ち会ったからこその演技だったのかもしれないが、本当にマジリアル。私もいきむとき、あんな感じだったのを思い出しちゃった。そして、赤ちゃんがその手から離れたときの泣き方が…あんな可憐な少女のどこからこんな声が出るのさ?というほど低く太く哀しい響きだった。あんなの、マンガじゃ表現できないよ。

 

来週もテレビの前でかぶりついてみようと思う。タオル片手に

今度は「すきやばし 次郎」に行ったときの話。

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『鮨 水谷』問題について/実際に行ってきたときの話。

fujipon.hatenablog.com

日刊ゲンダイ』に件の炎上記事が出てからかなり時間が経ってはいるが、今日FBに思い出したようにこの問題を投稿していた人がいたのでふと思い出した。(炎上記事とそ考察については上記の記事が分かりやすいと思いましたので、ご参照ください)

 

実は、日刊ゲンダイの記事が出てから1か月後くらいに行ったのだ。『鮨 水谷』に。メンバーは2名。35歳女と31歳女で挑んだ。ちょうど好みも収入も状況も同じような感じだった我々は、物理的に離れているためにあまり会うことができない。なので、たまに会う時は超有名店に行こうぜ!と勢いづき、じゃあ『鮨 水谷』行ってみたいわよね!予約してみよう!となったわけだ。我々の他のお客は2組。1組はいかにも常連といった風情のオジサマ3人組。もう1組は中国人の若者5人組のグループだった。

 

『鮨 水谷』は一晩に2回転で開始時間が決まっている。まあ、当然のように中国人グループは30分くらい遅刻してきた。5人中1人だけ女がいたが、短パンにTシャツだった。そして、鮨を食べている間ずっと携帯でゲームしていた(CANDY CRUSH)。しかも途中で携帯でしゃべり始めた。この女のTPOをわきまえない行動が印象的すぎて、他の男子たちがどうしていたか全く覚えていない。そして彼らはさっさと食べ終えて消えていった。

 

しかし、私が『鮨 水谷』で印象に残ったのは、この中国人グループの不作法っぷりにではなかった。水谷さんと常連オジサマ3人組が、中国人グループについて一切言及しなかったことに対してだ。水谷さんとオジサマたちは終始和やかに談笑していて、ずっと我々に絡んでいた。髪が茶色くて奇天烈な服装でやってきている(本人としては精一杯お洒落したつもり)謎の女2人組が気になって仕方がなかったのだろう(そもそも女2人でくるヤツなんていないだろうし)。何の仕事をしているのか、どこに住んでいるのか、などを遠まわしに絶妙な距離感で尋ねてきていた。だからといって不快なわけではない。それが彼らなりのもてなしなんだろうな、と思う感じ。うまく言えないけれど、仲間に入れてくれている優しさがあった。

 

そんな和やかな雰囲気だったので、中国人グループが退店した後に「困るねえ、ああいう輩は」とでも言うかと思ったのだが、一切なかった。全く触れず。そこで察した。ああ、こういう店で悪口じみた無粋な発言をするなんてあり得ないんだな、と。彼らは常連客や仕入れたネタを守るために外国人客の受け入れ数に制限をかけているのかもしれないが、外国人だから差別するという感覚は絶対に持っていないだろうと断言できる。一流の気品っていうのは凄いなと若輩者の我々は小さくなって店を後にしたのだった。もっと年とって堂々と食べられる風情と気品を身に着けてから、また再挑戦するぞー!